段々と秋の気配が近づいている事は前節の通りだ。
盛夏が過ぎ去り、虫の音が庭先から入って来る。
そろそろEsも一段落する季節になり、何となく自作をしたい妙な衝動
が出る時がある・・・・
本日の製作は(スピーカがガンガン鳴るゲルマラジオ)である。
以前の記事(ゲルマラジオで人生狂う)の延長だと思っていい。
実は、ガキの頃から数十年暖めていた企画?で当時は部品の入手
具合から実現は不可能と思われていたが、検討の結果いよいよ着手
する事に。
当時では入手不可能な贅沢な部品を使って、仕上る。
最終的な目標は当然、スピーカを駆動させるゲルマラジオの完成だ。
その前に・・・・
自作品が後世になぜ現存しないか?という話である。
多くの自作品は(完成)(動作)を目的として製作するが、(実用品)と
しての観点はあるのだろうか?と云う事である。
実用品として使っておれば、しばらくしてパーツ取りで分解されたり
おいそれと破壊分解はされないのである。
乱暴な言い方だが、実用自作品のキモはデザインとケース選びで
決定する。
メーカの外装設計に居た頃の話だが、パーツレイアウトと外装が
良いと、中身はクソでも売れる事に気付いた。
家電、オーディオ、趣味分野の商品はデザイン命である。
そのため、内部部品の価格よりケースやツマミ、メータ等にカネを
掛けたほうがユーザの愛着が湧くという詐欺的なセオリーが
現在でも存在する(日系企業はその傾向が強い)
メーカではコストの兼ね合いでギリギリの選択を迫られるが
自作品では、その壁を簡単に越えられる。
(しかし、外装デザインは一番難しい分野でもある)
・・・・・・・・・・・
又余計な話になったが、デザインポイントを抑えて製作する事にした。
(原理図 実製作ではトランス前後にSPとイヤフォン3,5φジャックを追加)
製作部品一覧表
①ケース 90□サイズ正方形 100均セリア NO196クリアクラフトケース
②チップターミナル 赤、青 各1個(サトーパーツ)
③3,5ミリ モノラルジャック 2個(テイシン電機)
④8Ωスピーカ φ60 1個(松下電器産業) NOS品
⑤角ラジケータ 200μA MAX 1個(松下電子工業) NOS品
⑥ツバ付ベークライトツマミ φ25(大きな直径を使うと同調が楽) 1個
⑦KIV線(メーカ不問) 1m
⑧エアーバリコン アルプス電気 親子バリコン(400PF程度) 1個 ※1
⑨並4コイル模倣品 1個 ※2
⑩アウトプットTR 100KΩ;8Ω ※3
⑪ゲルマニウムダイオード 1N60A 日立製作所 1個
⑫抵抗器 10KΩ 0,25Wタイプ(メーカ不問) 1個
⑬電解コンデンサ エルナ 220μF 50V耐圧 1個
⑭3×8ミリナベビス 4本
⑮接着剤 スリーボンド No1521 ビスロック スリーボンド No1401
⑯ケースカバー、トランス固定用 アクリル樹脂系両面テープ 0,2m
(※1,2、3共NPO法人ラジオ少年配布品)
※1 エアバリコンHタイプ ※2 R-210 ※3 BT-OUT-101
パーツレイアウト
小さいケースに収めるが、以下の点に気を付けないと感度が下がる。
並4コイルとバリコンは極力、離して配置する。
コイル付近に余計なリード線を近接させない(Q値が下がる)
出力トランスも同様にコイルから離す。
加工注意点
ケース加工はスチロール樹脂形成のため、ドリル当ては最小回転数
でボール盤等を使用して、鈍ったキリで穿孔する。
(スチロールは初期反発力が強いので、一度に大穴を穿孔しない)
半田接合注意点(これも感度に影響する)
余計な配線分岐を行わない。(リード接続は極力短くする)
極力、空端子を活用して配線する。
一見、簡単そうに見えるが部品配置、接続位置により感度が
大幅に変化するのがゲルマラジオである。
(1個1個 無駄にデカいが感度のキメ手となる)
(正面配置 外部信号引出端子を追加してある)
(正面下部 コイルとバリコンは離す)
(右側面配置 トランスも後方に引き寄せる)
(上面スピーカ配置 本ケースサイズでは6センチSPが限界)
(左面 部品配置 A端子がコイルと近接しないように配線)
(底面配置 中継ラグ板等は使わない)
(内部接続状態 1 電解コンの頭に接着剤を付けトランスに固定)
(内部接続状態 2 バリコンのアース側はハンダが乗らないので圧着接続)
感度
こんなもので、本当にスピーカが鳴るのかよ?と疑問を呈する方も
いるだろう。
わざわざ、エアーバリコンと並4コイルを使った理由は回路全体のQ値
を考えたからだ。
無電源でスピーカを鳴らすには以下の条件が必要である。
どれが欠けても絶対に鳴らない。
1、回路の感度が極めて高い事
2、信号ロスを極力無くす
3、出力トランスの損失が極めて少なく、リニアな変換効率が保障される事
4、電界強度がアンテナ端で3dbm 2mW程度ある事。(※)
※アマ用のワイヤーアンテナ(40mバンド)を張っていると、ラジオ送信所
から相当離れていても確保出来る。
支配的な要素は1と4である。
幾ら良いアンテナをこしらえても、回路の感度そのものが悪ければ
残念な結果となるだろう。
検波ダイオード
実は、1N60はメーカによって出来、不出来がある。
巷に売っているダイオードは特性にバラツキがある。
秋葉原界隈で販売されているものは、メーカ不明な輸入品もあり
スカを掴む確立は高い。
入手の際は、店のオヤジに最低限メーカを聴くべきだろう。※1
国産最高は日立製作所※2のモノである。(日本電気製も捨てがたいが)
※1 キチンとメーカを答えられる店は価格が高いのがイタいが・・・・
※2 ダイオードモノは日立が一番品質が良い。(当局イチオシだ)
入手の際はメンドウでも2,3件別々に買った方が良いと思う。
尚、本ラジオではSD34も試して見たが音は小さく検波能率は
悪いようである・・・
(7MhzDPアンテナに接続 Sメータに注目 NHK第一を受信)
(Sは2,5程度を示しているがスピーカからガンガン音が出る)
当然の事だが、アースは代用アースでは不可だ。
筆者の環境では無線機用に独立アースを打っているので(10Ω以下)
それと共用している。
試しに、水道管アース、電灯線アースを試して見たが全く実用に
ならなかった(絶対的な電位差が必要だ)
アンテナ側はDPのホット側を分岐して接続している。
3,5メガのロングワイヤーだとアンテナ端電圧も十分過ぎる位に
取れるだろう。(放送タワーとの方角も関連するが)
音質と音量
非常に良い。トランジスタラジオや、他の機器でラジオを聴くと
ホワイトノイズが入り、無音状態になると耳障りであるが
原理上ホワイトノイズが発生しない回路であるので忠実度は高い。
また、内部スピーカでもうるさい位に鳴るため少し離調状態で
音量調整を行っている。(独立ボリュームを付けるか検討の余地あり)
更に、外部スピーカ(安コンポ用)を接続すると、これまたイイ音が
するのである・・・・・
選択度
当地ではNHK第一と第二の間に民間ラジオ放送の周波数があるが
近接していても選択度が高いために、混信妨害は無い。
バーアンテナに付け替えて試験してみた所、甚だしい感度低下
混信が発生した。(バリコンをポリタイプにしてもダメだ)
矢張り回路のQと分離は重要である・・・・
原始的なラジオであるが、条件と良い部品を使えれば
痛快なラジオを作れるだろう・・・・
この記事を見た方には、是非1台製作されて見る事をお勧めする。
全体の組み立てに要する費用と時間は僅かである。
腕に覚えの有る方は、高級木材等を使用してレトロ風味に仕上げても
面白い筈だ。
※ちなみにバリコン端子を開放させて、アンテナ端子を無線機に
接続するとスピーカの鳴るAMモニターになり便利。
(別途スイッチを付ける必要があるが)・・・・
応用して作って見て下さい。
追記)電解コンは容量が大きすぎると、音声電圧が充電されず
音が出なくなるので、適宜調整が必要。