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Channel: 極私的10mAM 無線通信研究所
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FT-747(SX)修理依頼

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本記事は修理依頼者許諾の元、執筆しています。

筆者も現用している八重洲無線のFT-747。これも非常に旧い機種なのだが
何故か人気がある。今回はこいつの修理依頼。

747の特徴として、今では当たり前だがプラスチックケースが採用されており
以外と軽い。また、直感的なオペレーションが可能なインターフェイス設計で
HFに馴染みの無い層にもV,UHF機感覚で扱える。

発売当初は余り売れて居なかった模様だが、CQ紙などで(移動運用)や
(サブ機種)に好適と紹介された後に爆発的売れ行きを示した様で有る。

さて、今回の修理依頼は・・・

1、バンド全体において受信感度が悪い。
2、送信出力が不定期に出ない。
3、送信受信時に雑音が出る。
4、キャリアポイント調整が利かない。
5、パネルスイッチが利かない。
6、時折、ヒューズが飛ぶ。
7、AM送信音が悪い。
8、パネル照明の交換。
9、底面ケース破損
10、自己改造ポイントの復元(オリジナルに戻す)
11、総合調整(ゼネガバ送信改造含む)

FT-101のレストア並みの依頼だが、トランジスタ機なので気楽に
修理を行う。

まずは診断。

ヒューズが飛ぶ症状が出るとの事なので、電源を入れる前に外部電源端子に
テスタを接続しPOWERスイッチを入れる。
数キロΩを示している、大分低い。電源ユニット周りに異常がありそうだ。
何回かPOWERスイッチを入り切りしている内に数値が暴れだした。
スイッチ本体+電源の複合故障っぽい。ある程度修理を行ってからでないと
全体的な不具合は見えて来ない。
FT-747でこの症状が出るのはPAユニット内にある松下のリレー劣化
特有の症状だ。

次に、ケースを全部外して全部バラす。
プラボディ割れはエポキシ樹脂(アラルダイト※)接着剤で補修。
(※国産エポキシ樹脂より耐衝撃性、経年変化に優れる)
(硬化後は金属(アルミニウム)と同等の硬度になるので便利)
(硬化時に非常に有害なガスが出るので注意)

イメージ 1


電源ユニットをバラして各ポイントを当ると案の定、松下のパワーリレーの
コイル側がショートしている。これでは電源を入れる度、不定期にヒューズが
飛ぶ症状が出るのは頷ける。オリジナル品はまた不具合が出る可能性があるので
オムロンの汎用リレーに交換する。

前後するが、上記画像の通り一旦仮組みしてパワーON。電源は入るように
なったので不具合箇所の洗い出しだ。

確かに受信、送信が不良だ。時折送信出切るのだが、安定化電源のアンペア
メータを睨むと明らかに電流が流れ過ぎだ。
ファイナルかプリドライバーがパンク寸前の症状が出て居る。

受信は基盤を揺すると、ガリ音と共に一瞬復調がされる。
典型的な半田不良の症状だ。
メインやサブ基盤に紙エポキシを使っているためだ。

紙エポキシは収縮率が高いので、数十年使うと温度変化により基盤全体が
伸び縮みサイクルによりパターン剥離やランド割れ等、様々な症状が出る。
近年になって、紙エポ使用の弊害が顕著化したので国産メーカではトラブル防止
の観点から全面的に使用を中止している(家電メーカは?)

747の場合、電源送信系以外の不具合は半田不良が多い。
全てのランドに再半田を施す。

イメージ 2

画像では解り難いが、半田の盛り付けが少ない。加えて黄色のマークパターン
が見えるが、ここには電解コンデンサが実装されている。
この部分は極端に半田が薄い。拡大鏡で見るとランドに皺が出ており
劣化症状を呈して居る。

根性で全てのランドに再半田し、再度電源を投入すると受信時の不具合は全て
解消されている。バンドゲインを測定してみた所、新品時と変わりない数値を
叩き出した。(中波の感度が以外に良い、分離は悪いが)

依頼者が行った改造を全て撤去してオリジナルに戻す。
途中、パターンが負けて剥離したのでメッキ線で補修。FM送信時にデビエーション
を上げる改造だったが、感度も悪くなる要素が含まれて居た。
この改造はモービルハム誌に載って居た様な気がした。

ある程度受信調整を行ってから、肝心の送信系に移る。

イメージ 3

改めて送信系を点検する。747SX(10W)の場合、信号の流れは・・・
Q04のレギュレータで8Vを作り、Q01のプリドライバ2SC2166を
駆動、Q02,03の2SC3133の合成出力を経てアンテナへ電波が出る。
Q05の2SD882はファイナルの2SC3133へバイアス電圧を供給する。

イメージ 9
(画像はファイナルユニット リレーもダメ)

ボードの再半田後でも、送信が出たり出なかったり繰り返すのでデバイスに
問題がある。時折出力が出るのでファイナルバイアスのQ05では無さそうだ。

Q04の8Vレギュレータの出力は出て居るので、残すは・・・Q01しか無い。
オシロでQ01 2SC2166のアウト信号を見ると励振レベルが非常に
低い。しかも凄い発熱でパンク寸前だ。

イメージ 10
(問題の2SC2166 リプレース時は絶縁ワッシャを忘れずに)

さて・・困ったぞ。
と、云うのも2SC2166はとっくの昔に廃番品である。

イメージ 4

イメージ 5
(2SC2166は元々、11m用の石で6W出力)

昨今高周波用のトランジスタは品薄で、オリジナル品の価格高騰が激しい。
代替品は無いか・・・とパーツ箱を漁っていたら良い物が出て来た。
三洋の2SC2078である。これも11m用の石である。

イメージ 6

耐圧と出力が少し異なるだけで、ほぼ代替品と云っても良いだろう。
迷う事無く交換する。(笑)

再度、仮組して送信試験を行う。事前予想では出力が低くなると見て居たが
新品時より少しパワーが余る位のアウト出力が出た。
ファイナル周りの回路図に有る通り、アイドリング電流調整用のVRが無いので
不満だが追加改造で付加しようと考えたがオリジナルから外れるので
ここは現状で行く事にする。

ファイナルユニット全体の電流値を当ったが、暴れていないので大丈夫そうだ。
次にCWで連続、間欠送信試験を行う。送信30秒受信2分のインターバルで
しつこく30分程繰り返す。

ファイナル周りの温度を測ると70度近辺で落ち着いており、温度上昇が
60度を超えると少し出力が落ちるが問題無いレベルである。
ファイナルケースがアルミダイキャストなのでうまく放熱がされているようだ。
逆に100W機のGXでは放熱容量が足りなくなるだろうと思う。
(同じダイキャストケースを使って居るため)

次にAM、FM変調試験。
ご存知の通り、747は最大出力でAMを出すと所謂マイナス変調※となる。
SX(10W)機の場合、出力ボリュームが3-4W近辺で絞ると音声を入れた
場合プラス変調となる。プリドライバーを代替品に交換したので特性が変化する
と思われたが、2SC2166と同様のカーブを書いてるようで安心した。
(※変調についてはここでは割愛する。面倒なので)

AMの送信音質だが、フィルタが入ってないので余り宜しく無い。
現在、フィルタ新品は入手不可能なのでここは手の付け様が無い。
依頼者へ連絡すると、SSBメインで使うので問題ないとの事。

FMだが、元々スーパーナローだ。簡易的なFM回路なので調整のしようが無い。

送信、受信周りが正常になったので再度、総合調整を掛ける。
コールドスタート時は周波数が少しフラフラするようだが、10分もあれば
落ち着く。キャリアポイント調整用のVRを新品に交換して、再度合わせ込む。

いよいよラストに近づいて来た。正面パネルを全部バラす。
接触不良気味な正面操作スイッチは隙間に接点洗浄剤を入れ、数十回オンオフ
すると復活した。LCDの表示不良も、正面パネルボードの全てのランドに
再半田を行ったら正常に戻る。

ここで、照明のムギ球をLED化する。ムギ球の取り付け穴は5mmなので
LEDがすんなり入る。ここには電球色LEDを仕込む。

(ゼネガバ送信改造)

フロントパネル側下部基盤から茶色のジャンパ線がある。
これをカット後、USBモードにして周波数を
12,3456Mhzに合わせる。
電源OFF
再度電源ON。その際、LCDパネルに(GEN)という表示が出るとゼネガバ
送信OK。(バックアップバッテリがヘタって居ると、電源を切ると設定が飛ぶ)

・・・

リペアしたカバーのエポキシが完全硬化したので、一気にケース組みする。
補助基盤差込のコンタクトピンの洗浄を行うが経年変化でソケット周りが
変形している。紙エポキシ基盤は反って来るので、数年後またリペアしなければ
ならないのが予想出来る。
(尤も、全面再ハンダ時に基盤ストレスを取る方向で行ったので大丈夫だと思うが)
(反った方向に左右上下円周状に半田を盛って行くと、ストレスは取れる)

イメージ 7

全ての修理が終わったので、エージングで様子を見る。
画像はHBC函館送信所 900Khz 5KWを受信中。
当地とは可也り離れて居るが、実験用の適当なワイヤアンテナで59+40dB
で受信可能だ。(受信は昼時間)

修理前は微かにしか受信出来なかったが、ここまで感度が出る。

次にNHK東京第一 594Khzを受信。(これも昼間受信)
メーターは52程度だが当地でも良好に聴こえる。
747のBC帯域の受信ゲインは可也りあるようだ。

イメージ 8

アマバンドも受信、送信を繰り返したが全て問題無いようだ。
筆者の所有する747より好調だ・・・2,3年はキャリアポイント調整以外
弄る必要は無いだろうと思う。
もう暫く様子を見て、週末に返送しようと思う。

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