また暑くなった。こんな日はビールでもガーっと呑みたいがナイトCMが
有るのでそれも出来ず。酒は土曜までお預けだ。
さて9月だ、久し振りにFT-101でHFをやろうと思い、電源を入れたら・・
15mバンド、受信感度低下
10mバンド、送信出力低下
160mバンド、送受信低下
ついでに各トラッキングポイントが微妙にズレている。※
(※オマエが世間ズレしてるから機械もズレんだよとか無しで)
ついこの間整備して完全だと思って居たのだが、数ヶ月電源を入れずに放置
していたので旧い機種独特のヒネクレが再発したようだ。
水晶発振子の励振レベルをオシロで見ると、弱々しく発振していて
CANケースを指パッチンすると時折、発振停止する。
(指パッチンの親玉例)
(若い頃のショーン・コネリーに少しだけ似ている)
また全体的にバンドゲインが低く、トラッキングのドリフトとは考えられないので
回路図を睨める事に。と・・・
(心臓の発振が弱い)
RFユニットのQ4 東芝2SC372 Yランクと
Q5 東芝2SC373(ランク不明)が怪しい。実に臭う。
臭うのは筆者の屁のニオイではあるまい。
製造から40年以上も経過しているので、劣化しているように思える。
C372は良く子供向けのラジオ雑誌で使われる初期の汎用トランジスタだが
高周波特性が結構優れているので、同時期の無線機には良く実装されている。
他の事例を見ても、後年事故を起こすトランジスタの類では無いので
初期点検の際疑って居なかったのだが・・・
取り敢えず代品を探す。C37x系のトランジスタはC1815と代用出来る
と思ったが、高周波用途では受け側の入力容量の変化で周辺回路の手直しが
必要になる場合があるので安易な代品は使えない。困った。
何れにせよQ4、Q5は周波数の元を作る重要な部分なので、ヘタなトランジスタ
を使うと受信送信ともNGになる確率が高い。FT-101は微妙なバランスで
成り立って居る装置なので数日悩む・・・
・・・・部品屋・・・・
このブログで以前記事にしたと思うが、1エリアの電子部品(機器)サルベージ屋
の友人に連絡を取る。
・・・あーもしもし俺だけど、暇?電話中々繋がんないんだけどさ
うるせえ、何の用だ?
・・・ちょっと聴きたいんだけど、トランジスタの代品リストとか持ってる?
そんなものは無い、何か買え。
・・・2SC372の代品とか知らない?
んな古過ぎるわ!何に使ってる?どうせ無線機だろう?
・・・FT-101・・・
そんなもん捨てちまえよ、今はIC-7300とかの時代だぜ。
ちょっと時代遅れのジジイだぜ(笑)
多分、2SC710とか711が近いんじゃねーかな、無線機に使う場合
考えねーとダメだぞ、混合変換発振とか絡むからよ。
何メガ台扱うの?それによって違うからさ。
・・・じゃ711くれよ、ランク指定は無しでごちゃまぜ100本
足が変色している奴とか、当時物はダメだ。再生産品あるかい?
(嫌味くさい奴だ段々、はらが立って来る 笑)
そのものズバリでC372とかはあるかもな。
あとよ真空管用のアウトプットトランス入ったからよ要らねえか?パレット1個
分だぜ、日本製のあれでよ。巻線がぶっとくて最高だぜ。重たいけどよ ワハハ。
・・・それは要らない、またトラブル可能性あるから
(トランスとか何処から放出されたのか、気になるが・・・)
分ったよ探して711送るわ、今回、金払えよ。高けえからさ。
あとよ、お前パーツフィーダー治せる?出来るなら相殺でいいぞ。
・・・モノによるけどさ、メーカーは?
xxx精工の〇〇シリーズなんだけどさ、部品送りがズレて中古でも出せないんだよ
・・・大型機だから無理。そっち行っての修理になるからダメだぞ。
ステッピングモータからサーボモータにしないといけない。
お前から作業料金貰わないと、合わない。1時間7K円が相場だからさ。
ついでに飯も食わせろ。あと、セミコン製造装置の中古販売は敵が多いから
やめとけよ。カネが随分掛かるだろ。あと保管も防塵倉庫でやらないと
汚染で使い物にならないぞ。それに素手で装置に触るな。
体に悪い。ガンになるぞ。
うげー。知り合いいねーのか?
・・・直ぐには無理。
ああ、いいやこの件は。取り敢えず711送るからよ。
頼むよ、ガチャ(お前このブログ見てんだろう 笑)
全く、口の悪い奴だ。(筆者も人の事云えないが・・・)
部品到着までの間、2SC711の素性を調べる。
C711は高周波汎用らしいが、改良版の派生品種が多数あるようだ。
良く使われたC710の上位互換(高周波特性、HFE向上品)の並びに入る。
翌日、ヤマトの特急便で部品が来た。部品代より送料が高いだろう。
請求書が入って居ない事を願ったが、バッチリ同封されていた。このやろう(笑
包装ビニールを破ると真新しい2SC711のお出ましだ。
包装は何処かの工場放出品らしき、バーコードとシールが貼ってある。
出所が怪しい(笑)
フムー、旧規格品に見えるが、HFEを計ったら140以上も有る。よしよし。
直ぐ交換だ。パーツボックスにあるカップリングコンデンサを準備する・・・と
何と、以前大量に購入したC711が出て来た。買わなくても良かったのだ。
確かマランツかサンスイのFMチューナ修理用に取って置いたと思うのだが。
余計な出費だ(笑)ストック分はリード足が微妙に硫化している。
これはもう駄目だろう。潔くゴミ箱行きとなった。
RFユニットを抜いて、Q4,Q5を交換する。極性はオリジナルのC372とは
逆のようだ。スルーホール基盤だが、リード挿入穴が大きいのでハンダの吸い上げ
は楽だ。(最近のスルーホール基盤は、穴がギリな為苦戦する事が多い)
(RFユニットが不調だと全バンドに影響を与える)
電源ON。シャーと甲高い復調音が出る。ノイズを聴いただけでゲインが
戻って居る事が耳で判る。
(残骸)
SSGから各バンドへ信号をインジェクションすると、予想通り上下に
周波数がドリフトしている。トランジスタを交換したためだ。
SSB機種の元発周波数合わせ込みは、最もやりたくない作業である。
理由は簡単だ。FT-101ユーザならご存知の事と思うが調整用トリマが
いい加減でゼロインが困難であるためだ。
以前、FT-101Eで調整を行ったが丸一日掛けて水晶のゼロインを行って
も半日もすると、数10ヘルツも動いて仕舞う。
工場出荷時に実装されている磁器トリマを、最新の精密トリマに全交換したい
ところだが生憎、別件で使い切って仕舞って居る。さあ困ったぞ。
何回もトリマヘッドをグリグリすると、旧いトリマは直ぐお釈迦だ。
仕方無いので、一発勝負で決める事にする。
(11mの水晶は入れてません 笑 33.02MHZ)
各バンドがどの位ドリフトしているか、メモを取りトリマの回転量を割り出す。
全バンド同じ量でズレている。何とか調整範囲に収め切れそうだ。
目標ゼロイン誤差は5Hz以内を目指す。(10HzもズレるとSSBではNG)
FT-101のヒータ電源を投入し、本体温度が一定に成るまで暖気通電する。
その間、別の無線機を用意して調整準備を行う。
・・・1時間経過。FT-101のトリマボード温度をレーザ温度計で測ったら
41度と出る。温度上昇がサチった様だ。
別な無線機とFT-101の周波数を同一にしてハウリングさせる。
ヒョロ~ヒョロ~・・・音で聴くと随分なズレだ。
フーワ、フーワ ・・・この辺だ、トリマ位置調整が微妙で0.数度回すだけで
ゼロインポイントがズレる。集中し過ぎて汗が出る。
受送信を繰り返すが、1つのバンドを合わせるのに30分も掛る。
途中で15mバンドのトリマが破損。作業は中断、トリマの交換に切替える。
(この画の方が見やすい)
修理してるのか調整してるのか、はたまた壊しているのか・・・
一歩前進して4歩位後退だ。101は容易に治ってくれない(笑)
さて15mのトラッキングトリマの交換だが、このボード裏には細い配線が
多数無理矢理ハンダされており作業性は最悪だ。
しかも微妙なバランスで、ボード裏にマイカコンデンサが実装されており
コテが入らない。細いコテでやろうと思うが、ハンダの量が多く熱容量が足りない。
(やりたくない作業の1つ)
諦めて、ボードの配線をカメラで記録。周辺配線を外して仕舞う。
この方が早い。
・・・・
さて、15mバンドのトリマ交換が終わった。
先に調整済みの10mバンドの再現性を見ると、やっぱりズレている。
ちきしょう(笑)1個部品を交換すると、他に影響があるのが101である。
中々、手強い。頭に来るぜ八重洲無線。
(残骸が増えました)
数時間掛けて、水晶の発振周波数ゼロイン作業が終わった。
ナイトCM後の体には堪える。作業は翌日に持ち越しだ。グガーzzz
・・・・
翌日、ナイトCM後に作業再開だ。何処までこなしたか忘れて仕舞って居る。
再現性を見るために、水晶のゼロインを確認する。
幸いズレて居ないようだ。次の作業は送信系のピーク出し。
・・・数回送信トラッキングを行っても、ハイバンドの出力が弱い。
この部分は以前に完全リニューアルして故障要素を排除した筈なのだが・・・
(正確なトラッキングチャートが必要です)
(プリセレ位置に注目)
高圧電源やスクリーングリッド系の直流を計るが、異常は無い。
160mバンド以外、150Wは叩く筈なのに・・・どうも変だ。
音声を入れてもALCメータが振れない。
・・・・
周波数マーカをONにする。メータと音を聴くと妙なビートが掛かって居る。
発振も弱い。また回路図を見ると、6V系の制御電源が絡んでいるようだ。
ここは今迄一度も手を入れて無いし、見ても無い。
どれどれ、電圧出てるかな・・・うん?4,82V。
6V基準に対して4,8Vとは低すぎる。レギュレータボードの出力調整VRを
見つけMAXにしても5,86Vしか出ない。0.14Vの不足だ。
6V制御電源もガタが来ているのだろう、スイッチングTRか周辺抵抗の
リプレースも必要だが、今回は疲れ切って居るので電圧調整だけで終わらせる。
(レギュレータユニットのVR3を目一杯最大にしても・・・)
再度、マーカON。メータは59+40dbまで勢い良く発振する。
? 受信周波数がズレたような気がする。また水晶のトラッキングのやり直しだ。
何回も同じ事をやってるせいで、サービスマニュアルを見なくても慣れて仕舞った。
ヨシ。受信系統は完全復活だ。送信調整に戻る。
6V制御電源調整前は出力が低かったのだが、今度は各バンド150W以上を
叩いており危ない感じさえ受ける。球のライフを考え100Wジャストで調整
を取る。
このブログを訪れるキーワードで、(FT-101 ALCメータ調整 送信)
で訪れる方が結構いるようだが、知りたいポイントは何処だか判る(笑)
つまり、きちんと説明書通り調整しても出力は出るがALCメータが動かない
件で困っていると思う。
TUNEモードで最大出力を取っただけでは、ALCは絶対に振れない。
解決方法は簡単だ。まず・・・
1 TUNEモードで最大出力を、一時的に出す(送信トリマ調整)
トリマを動かし、80-100Wが出る回転位置を覚えて置く
2 SSBモードに切替えて音声※を入れながら、先程の送信トリマを微妙に
回転させる(2~3度)これが難しい(笑)
※ウーウーアーアーなど(口笛は長続きしない 眩暈が・・・笑)
3 ALCが触れるポイントが見つかったら、微調整で更に追い込む
これをバンド毎に繰り返す。
再度、TUNEモードにして送信するが音声ピーク出力とTUNE出力は
次第に一致するようになる(事前にキャリア注入回路の適正値調整要)
・何処かのポイントで送信出力が低くともALCが勢い良く触れるポイント
がある筈だ。出力が低い場合はプレートを出し入れして微調整するか
ロードを変える。この時にプリセレは触らない。(触ってもコンマ数ミリ)
・これを繰り返すと、あら不思議(笑)ALCメータはビュンビュン触れて
恐ろしい程にパワーが出る。送信トリマボードは2枚に分かれているので
同時に調整を取り、丁度良いポイントを探すのは結構時間が掛かる。
・何度調整してもパワーに対してALCが振れない場合は、ALC検出回路
(真空管裏面にある)の修理が先だ。
・プリセレが適正位置でないと、上記調整をしてもALCは振れない。
従ってマニュアル記載のプリセレ位置(5とか6.5とか)をチューン前
に正確に合わせておく。(受信最適位置とは大抵異なる、これはあとで
合わせるので送信調整時には気にしない)
※送信、受信トラッキングが合わないからと、μ同調ユニット(バリアブルL)
をバラして調整するのは間違いである。μ同調の原点位置は強固に固定され
て居るので滅多な事ではズレない。プリセレがズレるのは受信、送信トリマが
経年変化の影響が出て居るからである。どうしてもバラす必要がある場合は
先にトラッキングトリマ(数十個)の一括交換が先だ。
それでも特定のバンドでトラッキングが合わない場合は、トリマ容量や
パディングコンデンサの容量変更で症状は治まる筈である。
送信トリマボードのC7も事前に交換しておかないと、迷路にハマるので
トラッキングで悩んでいる方は一度試して欲しいと思う。
また、送信タンクコイル※の配線も経年変化で剥離するパターンもあるので
色々な原因を予想しながら潰して行くと、時間は掛かるが破壊修理とは
成らず必ず結果は出る。(※プレート位置が大幅にズレる)
点検順番は(終段※)⇒(終段補助回路)⇒(アンテナリレー)⇒(タンク回路)
(バンドウェーハ断線)⇒(送信トリマボード)
※プレート、ロードバリコン含む
さて、送信受信のトラッキングを行って居ると10mDバンドの出力が
今一の様だ。30メガ台のSSBを発射する運用は皆無なのだが、少しお遊びで
実験する事にする。
トランジスタを交換したRFユニットにVR1が付いている。バンド送信時に
励振レベルを見てると判断出来たので、これを最大にして見る。
・・・と・・一番上の30メガ台でも軽く100Wが出る様だ。
順次、バンドを切替えてパワーを見ると各バンド20W程度出力が上る。
高調波をスペアナで見ると、3.5メガ台で多少荒れて居るが80mバンド
なので気にする必要も無いだろう。
完全調整しても、出力が足りないと思ったらVR1を可変しても良い。
・・・160mバンド
たまに運用する事がある1.8メガだが筆者宅のアンテナでは乗りが悪く
年に1回程度しか運用しない。1.5メガにNHKの放送が居るので
FT-101で運用するには勇気が要る。
ここでもALCメータを元気に振らせるだけのパワーが出るが、怖くて仕方無い。※
調整中にラジオを聴いて居たが椅子で寝て仕舞う。ハンダゴテがボタッと膝に落ちて
飛び起きる(笑)
※実際、フルパワーだけで調整すると高い周波数程スプリアスが増える。
全ての修理は完了した。予期しないポイントで修理調整を迫られたり
作業の手戻りが発生したが完全にフルパワー、最高感度を出せる機体は
操作して居ても楽しい。
まだまだ使える筈だ。
FT-101の整備性だが、同時期のTS-520と比較するとマシな方だ。
520のバックシャシを見ると、配線がこんがらかって修理する気にもなれない。
作業性の良し悪しで、後年まで使えるか別れ道だろうと思う。
ハムフェアで今年も101が大量に出品されたようだが、この機体はマメに
面倒を見なければならないので考えて修理をする向きにはもって来いだと思う。
使用部品はファイナルのRFCやピーキングコイル以外は標準品なので
地方の部品屋でも容易にパーツを入手出来ると思う。
何が何でもオリジナル品嗜好の方は筆者の修理は相容れないかも知れない。
使ってナンボ、電波を出してナンボの考えで有る。
特殊部品として、円盤状のピーキングコイルだがまだ新品で生産されている。
販売業者を紹介するので参考にして欲しい。
但し、他局の事情も考え買占め等は止めて頂きたい。
沢山買っても使わない事が多い。
(FT-101のコイル保守部品は高確率である 但し同等品)
ラジオセンタ内 東邦無線
※通販は5K円以上から受付。詳しくは店のオヤジさんへ確認。
(高容量のRFCも在庫がある ※在庫要確認)
(101のピーキングコイルは地方での入手が難しい)
東邦無線はレアは部品を沢山持っていて、安価で放出してくれる。
参考までに、FT-101オリジナルに近いトリマもある。
(画像参照)
(10PFのニュートラバリコンとか 多少加工要)
(トラッキングボードに使用されている磁器トリマも豊富にある)
少しは参考に成ったでしょうか?また次回お会いしましょう。