また、どうでも良い話だがFT-101Z(灰色の初代FT-101では無い)が
故障した。何気なく電源を入れて、久しぶりに使おうとしたらこれだ。
(過去に数度リペアしてある)
FT-101Zは初代FT-101とは回路が全く異なるシングルスーパ機種で
周波数直読カウンタ付きまである。
(バリエーションは数多くあるので、正確に言うと9機種程度派生するようだ)
(1.8MHZ帯送信不能!!)
筆者の所有するFT-101Zは最終モデルで、不具合が全てフィックス済みの
物なのだが、この機種はマイナートラブルが初代FT-101より多い。
又、回路が非常に複雑で一部基盤がプラグインになって居らず、すこぶる保守性が
悪い。そのせいでまともに動く機種は少ないと思う。
(フリケンシ計算用LSIは交換済み)
海外では初代FT-101と並び、非常に人気のある機種なのだが日本国内も
最近オークションでの価格上昇が著しい。
修理情報も少なく、添付される回路図も間違いや謎(?)の仕掛けも相まって
筆者もあまり手出しをしたくない機種の一つである。
さて、今回の故障内容は・・・
・バンドによって出力の出方に著しい乖離がある。
・管電流計がハンチングを起こしている(ブルブル震える)
・バイアス電流の立ち上がりが遅い(ジワーと上って来る)
球を壊したく無いので、まずバイアスから見て行こう。
(バイアスコントロールVR)
正面左奥のトランス横に整流ユニットがあり、これまた旧い規格のVRがある。
こいつの接触不良だ。初期位置をマジックで罫書いておく。
一度パワーダウンさせ。VRの裏から接点洗浄剤(少量)を拭きガシャガシャ
回して、接触抵抗の復活を図る。
テスタをVRの足2本に接続し、回転軸量に対してリニアに抵抗値が変化する
事で復活の確認を取る。
途中で、抵抗値が飛んだり変わらない場合は即交換。
何故ならこのVRの加減一つで真空管がダメに成って仕舞う。
同等品入手の際の注意点だが、結構電流が流れる抵抗なので消費電力の高い
旧型番と交換しなければいけない。トランジスタ用の小さい物はNG。
・・・幸い接点洗浄だけでこのVRは復活したようだ。
再度、電源を投入・送信し管電流を50ミリアンに素早く合わせる。
(50ミリアン以下は絶対不可、50を少し越えても良い)
バイアス調整中にパシっと嫌な音が底面ファイナル付近から出た。やれやれ。
とうとう全分解しなければ成らなくなった。
(この辺りが怪しい 貫通端子に配線が無いし、また仕掛けが・・・)
ブツブツ独り言を言いながら、底面カバービスを緩めて臓物を見る。
久しぶりに裏面の配線を見ると幻滅して来る。初代FT-101より配線量が
圧倒的に多く、タコ足配線が酷い。
一応、ファイナルボックス周りに付いて居るホコリを吸い出して
再度送信を行う。今度は嫌な音は出ない。多分ホコリで何処か絶縁破壊したのだろう
先程のバイアス合わせに戻り、管電流を見るとバイアスの立ち上がりは正常に
なったがキャリア注入するとまだメータが震えて居る。
この症状は裏面の整流ユニットが怪しい。
で・・・視線を移すと・・・
(TS-940並の配線量で嫌になる)
・・・んん?
(おい 笑)
初段整流ユニットのD7の様子が明らかにおかしい。
筆者はこんな修理はしない。前所有者はボードを起こさずにチョン付けで
整流ダイオードを交換したようだ。
半田の輝きを見ると、最近のようだが当に10年以上前のダイオード型番が
見て取れる。
ダイオード交換は一括交換が基本だが・・・
(手持ちの高圧ダイオードは使い切って居るので、一括交換は次回にする)
横に卵型の日立V型ダイオードがチラっと写って居るが、これも良く壊れる。
新旧101ユーザは高圧メインの10D10(1N4007)と補助電源用の
10E1は常にストックしておくべきだと思う。
何故なら、オーバーロードで球を使って数分もするとダイオードが過電流で負けて
ヒューズが落ちる。(補助電源ダイオードが頻繁に飛ぶ場合、各回路の点検を)
これは結構マジだ(笑)
はてさて、半田を修正する。再度電源ON!
メータのフラツキは終息した模様だ・・・ハァー何だかね。
次にバンド毎に出力が異なる点をフィックスする。
これはロータリスイッチの接触不良とアタリを付ける。
底面カバーを空けて、スイッチを見た瞬間予想出来た。
バンドスイッチの接点は旧型FT-101より少ない。
しかし、メーカはNIKKAIかアルプス製だと思われるので信頼性は無い。
露出型ロータリスイッチのコモン接点や、ポイントコンタクトは放置して置くと
直ぐに硫化する。
この時代のTS-520や八重洲の機種はここが鬼門となる。
接点の劣化を防ぐ手段はあるのだが、数十年後に化学変化を誘発しそうな気が
するので現行の保護材は使わず、ひたすら洗浄剤を吹き付ける。
(サンハヤトのリレークリーナと接点洗浄剤は微妙に成分が違うので注意)
ベーク材が薄いので、過度の吹き付けは厳禁だ。(ベークが反ってしまう)
何度かに分けて洗浄剤を吹き付け、瞬間的にセレクタを回すのがコツだが
どうしても直らない場合はどうするか?
正面のセレクタのツマミを取り外し、電動ハンドドリルのチャックに軸を
咥えさせ、ある程度の速さで回転させる。(1分で20回転程度)
右回転させたら次は左回転と交互に繰り返す。
電動で回転させながら、洗浄剤を吹く。(塩梅が難しい)
一人では中々難しい作業なので、家人にドリル回転を手伝って貰うと良い。
(セレクタのツマミは非常に曲がりやすいので要注意)
(この方法は接点が途中で噛むと、ネジ切って仕舞い再起不能になるので
素人にはお勧め出来ない。筆者は某メーカ時代に同じ事をして居たのだが 笑)
さて、接点のクリーニングが終わったので再度パワーを見る。
全てのバンドで定格出力が出て居る。OKだ。
(10mは60W程度しか出ないが、FT-101Zでは正常である)※
(6146やS2001の限界パワーは6JS6系より低いかも知れない)
(旧型FT-101は10m 150Wは出るのだが・・・)
(管種を変えて実験しようと思う)
※10mバンドスイッチ内に電圧ドロッパ用のレジスタがこっそり仕込んである。
次にファイナルボックスを点検する。
ホコリがバリコンに溜まっているので、容量の変化が怖い。
何しろ高圧が掛る部分でもある。
(一応S2001の新品 使用時間は100時間以下だ)
掃除機でジャーとホコリを吸い出すと、随分綺麗になった。
続いてプリドライブ周りも。
(こちらは日本電気製 12BY7)
全ての作業を再点検し、電流を3時間食わせる。
電源周りのコンデンサが熱くなって気掛かりだったが、収まったようだ。
(温度上昇が著しいと、非常に危険 旧いコンデンサは要注意)
高圧部分のレジスタも焼けている気配は無いのだが、先程復活させた
ロータリスイッチの配線を見て居て、ある事に気付いた。
妙に配線の遊びが多い・・・
回路図と照合しても、謎の配線がある。意味不明だ。
30分程度悩んだが、取り扱い説明書を良く見て居たら解決。
そう、ワークバンド用の配線だったのだ。
(30、17,12mは改造しろと・・・トホホだぜ)
筆者はこのFT-101Zでワークバンドをオンエアしていなかったので
気付かなかったのだが、工場出荷段階で送信禁止措置が取られていたのだ。
全く不親切極まりない会社だ(笑)他にも文句はたっぷりとあるが割愛。
筆者はてっきり、バンド水晶が入って無くて送信出来ないと考えていた。
同じような配線は旧型FT-101にも1箇所ある。
それは11mバンドの送信禁止ジャンパだ(ファイナル側の茶色の配線)
このロータリSW周りの設計は同じ人間が行って居ると思う。
配線を追って行くと、ワークバンドの接点が一括してローバンド同調コンデンサに
落とされている。これじゃ送信出来ない。やられた(笑)
早速、配線を外してぶっつけ本番で変更する。
ショートしたらまた修理すればいいだろう。(やりたく無いが)
(ファイナルトリマの横にある)
この謎配線の変更を行う。画で見た方が早いだろう。
(こうやって見ると配線は結構キモい)
手前のバンドSWから青い3本のKIV線を外す。
(ハンダが頑固なので切った方が早い)
(何か汚いなぁ・・・)
他のKIV線を切ると、送信不能に・・・・
正面パネル側のロータリSWに画像の通り配線する。
画像右側のオレンジ線とハンダされていた青いKIV線はカットする。
(どこにも繋がらない)
接続ポイント ・黄色のケーブルと右隣のコンタクトピン
・緑色のケーブルと1つ上のコンタクトピン
説明しにくいので、矢張り画像を参照頂きたい。
特に、左奥の緑色のケーブルと接続されているピンは非常に狭いポイントに
あるので他の線材をコテで溶かさないように注意。
30W程度のコテペンでやるとすんなり行く。
結線変更が終わったので、バンドを切替えて送信出来るか試して見る。
・・・3バンド共OKだ。
念のため、他のバンドも全て送信出来るか追加で試験を行う。
どうやら全てOK。疲れた・・・・
ケースを戻して暫く40mを聴いてみよう。
旧型FT-101より聴きやすいのだが、感度がシングルスーパなため
微弱な信号が拾えない・・・
新型でも一長一短がある。これもFT-101シリーズの面白い所だろう。
さて、又嫌な現象が・・・コンプレッサのスイッチにガリが出て居るようだ。
終わったと思っても
中々開放してくれない
(笑)
くそー
・・・ガリだと思ってたら、違う様だ。回路図をご覧頂きたい。
赤のラインはスピーチプロセッサのON時の信号ラインだ。
RFタイプなので、ラストにフィルタが入ったりと非常に複雑だ。
何処かで見た事がある回路だ。そうカツミのコンプレッサに似て居る。
プロセッサを入れると、パワーが平均して上る筈だがどうも伸びない。
逆に入れるとパワーが下がる。クリップポイントがおかしい。
・・・と言うか入力が足りない感じがする。
元凶は2個しか無い。そうQ402の2SK19GRの劣化か、Q404の
2SC372Yだ。
どちらも良く劣化して新旧101では泣かされる。
この八重洲定番のFETとトランジスタは、殆どの機種で寿命末期に
達して居ると思われる。装置の通電時間とは関係が無いようで、イキナリ
死亡したりジワジワ劣化したりとパターンが多く、全く信用出来ない。
2SK19の代品は2SK192A
2SC372Yは2SC711(E又はF)、2SC1815Y※
(※この部分は1815ではゲインが過大になるかも知れない)
さあ!交換しようぜ!チキショー(本日2度目)と実装図と実機を見たら
急にヤル気が無くなった。
実装図では1枚で簡単に交換出来そうだが、現実は違う。
このボードを引き起こす為には、周辺配線全撤去とFM基盤(筆者の場合)
とサブボードの2枚の取り外しが必要で莫大な手間が掛る。
ここで逆転の発想だ。
あ、俺ってSSBでコンプレッサ使った事無いよな(笑)
以上です
(笑)
おしまい
でも何だか
モヤモヤするね