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Channel: 極私的10mAM 無線通信研究所
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FT-101 ハム退治&DC電源部修理

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さて先週の記事、FT-101 ハム音が出る の続きである。

夕方近くに、ローカルの部品屋に注文していた高圧ダイオードが入荷したと
連絡が来た。店舗が閉まるのは比較的早い時間なので、業務終了と同時に
車でダッシュ!。帰宅時間にモロ当るので道路は混んでいる。

夕暮れの時間は随分早くなり、当地では18時前には真っ暗となる。
店舗に到着し、以下の部品を受け取る。

・日本インター 10D10相当品シリコンダイオード(1KV 1A) 8本
・同 10D4相当品(400V 1A) 2本
・不燃抵抗470Ω 2W 2本(R3 220Ω交換用)並列接続で235Ω 4W作成
合計420円也(高圧ダイオードが高い)

イメージ 1
体に悪そうな色をしている1000Vダイオード 10年位前の品物か?)

イメージ 2
(400Vまでのダイオードなら田舎の店でも在庫がある)

交換対象番号 (レクティファイアボードPB-1076B)
D5,6 DC160Vライン用※
D1,2,3,4,9,10,11,12 DC600Vライン用
R3 220Ω トランス中点分圧用(運転試験時発熱するようであれば交換)
※D6は高耐圧セラミックコンデンサの裏に隠れているので注意。
(以前の記事で13V用ダイオードは交換しているので今回は交換未実施)

この日本インター純正の電源用ダイオードは曲者である。
製造時期とロットにもよると思うが、他社ダイオードメーカと比較しても
短絡故障のパターンの割合が1ケタ多い様に感じる。

今回はPN境界接合の絶縁破壊→層喪失→ショートとなりFT-101の
5Aヒューズが飛んだと推察される。

オリジナルに拘らなければ、海外規格の1Nシリーズの方がメンテサイクルを
抑えられるかも知れない。

電源用ダイオード互換品使用時に於ける注意がある。
それは、耐電圧を上げても良いが電流値だけは上げない事だ。

インピーダンスが低い高圧系の場合、整流ダイオードはヒューズの役割も
担っている。
例えば今回1000V耐圧 1Aで故障が起きたので、2Aにアップしたとしよう。

負荷先で短絡故障なり、過電流が発生した場合2Aまでダイオードは頑張って
流すのである。こうなると負荷先のボードでも多重故障を誘発させる事になる。

最悪の場合、ボードパターン焼損や細いリード配線が燃える可能性がある。

FT-101の場合、リード配線の内部抵抗値も経年変化で上昇しているので
加速度的に火が上る事も十分予想され、そんな事になったら周辺部も巻き込み
修理対応は一層の工数増加となり趣味どころでは無い。

抵抗などのW数のアップは安全サイドに振れるが、ダイオードは当てはまらない。
高圧電源部の修理時には、安易な対応はすべきでない。

又、頻繁に整流ダイオードがパンクするのであれば、負荷先の故障である。
これは、他の真空管式無線機の電源部に於ける共通事項でもある。
(幸い101の場合ボードが簡単に切り離し可能なので修理ポイントは見つけ易い)

もう一つ、PB-1076B整流ボードの特徴なのだが当時 高耐圧の
ブロックダイオードが高価であったので、アキシアルリード品単機能のダイオードを
ブリッジ接続している。このサイドに抵抗470KΩがパラ接続されているのが
見えると思う。

この抵抗は非常に重要で、ダイオード1本1本に掛る電圧を均等に分流している。
抵抗値は8本共同じで、1本でも抵抗値に変化があると接続されているダイオード
にアンバランスな負荷が掛る。(先にダイオードがパンクする)

旧いダイオード抜き取り後に、8本抵抗値が揃っているかチェックが必要だ。※
この作業を省略したりすると、短期間は動くにせよ同様な故障を繰り返す筈である。
もし、抵抗値が揃って居ない様であれば、全交換するべきである。
(※精密測定はダイオード実装状態だと不可)

このボードは、非常に狭い場所にあるので頻繁にアクセスしたくない。
修理は1発でキメる必要があるだろう。

ここまで来ると前回故障時、音声にハムが乗った原因は明らかである。
DCに不良ダイオードからのAC分が乗った為である。

前回ハムが出た際、各ボードのプラグインターミナルの接触不良を疑い
タッピング試験(要は叩くのである)を実施後、収束したのは振動が
ダイオードへ偶然伝わり、たまたまPN層が回復しただけの事なのだ・・・・

そして、終に絶縁破壊→ヒューズ溶断。
(他のダイオードも過電流が掛って、死亡直前であろう)

つくづく、修理は推理(?)である事を考えさせられる。
さて、実作業に入ろう。

このボードは盛大に半田を盛ってあり、サービス満点だ。(笑)
半田吸い取り機を何回も操作しなければならない。

更にケーブルを外していないせいで、ボードが斜めの状態となり作業性が悪い。
作業姿勢が悪く指と首が攣りそうである。

イメージ 3
(前回からの続き チューブラコンデンサ 5W抵抗を外す)
(このコンデンサ PCB入りか? 謎)

ボードから1個づつダイオードを外すが、リード足がランド根元で直角に折り
曲げられ、外すのに難儀する。

イメージ 4
(ようやく10個外す)

ある程度、半田を吸い取ったらバチンバチンと実装面からニッパで落とし
最後に残った足を取る。ボードに極性がシルク印刷されているので
気にせずカットして大丈夫だ。

イメージ 5
(取り外したダイオード リードとシール部の境界でマイグレーションが発生)

四十数年分のヤニが汚らしく、パターン間の絶縁抵抗を著しく下げていると
思われるので、IPA溶液で徹底的に除去する。

一般的にヤニ(フラックス)は絶縁物だと思われがちだが、長期間放置していると
空気中のイオンを取り込み半導体の如き挙動を示す事がある。
また直接、高電圧が掛る部分なので気分的に悪い。

イメージ 6
(これ以上はフラックスクリーナの出番)

ようやくダイオードが取れ、作業は順調に進む。(変な姿勢なので腰が痛いが)

イメージ 7
(高圧だとホコリを呼び込むようだ)

ダイオードが外れた所で、抵抗の測定と行こう。
8本全て、規定値及び誤差範囲に収まっており交換の必要は無いと見込む。

そして、新しいダイオードをリードペンチでリードフォーミング(根元から1.5ミリ程度幅を取る)して一気に実装半田してしまう。

ここで気を付ける事は、今後も発生するであろうパンク事故に備えて
ダイオードを基盤と密着させない事だ。

今回の事故では運良く、ダイオードの発火は無かったが密着実装すると
万一火を吹いた際、ボード表面を焼いてしまう恐れがあるからだ。
写真では分り難いが、各抵抗も2ミリ程度メーカ実装時に浮かせてある。
高圧のDCを舐めてはいけない。

イメージ 8
(ここまで来ると、作業は終わった様なものだ スペースが狭い・・・)

ボードを元の位置へ戻し、M3ビス2本で締結する。(菊座ワッシャを忘れずに)
先に取った、コンデンサと抵抗は元通りに・・・・

ボードのスタッド端子から出ているリード線が外れて居ない事を確認し
配線整理を行う(部品干渉は無いか、リード線が引っ張られていないか)

イメージ 11
(最終確認を念入りに)

特に奥のトランス左部端子が、ボードと当っていないか確認。
(中々分りくいので懐中電灯などを使用して、良く確認する)
(気付かずに、電源を入れるとショートして作業が無駄になる)

大丈夫であれば、各スタッドーGND間の抵抗を測定して著しい低抵抗に
なっていないかチェックする。どうやら電源を投入しても良さそうである。

新品の定格5Aヒューズを入れ、ダミーロードを接続。
電灯線を差し込む。

イメージ 9
(事前チェックでOKとは言え、ドキドキものである)

POWER ON!

イメージ 10
(復 活)

一旦、パワーを切りひっくり返して再度ON。
スタッド端子の電圧を測定する。600Vラインが750Vと出る。

前回修理時と大差無いが、ボードに印刷されている電圧表示は最大負荷時
電圧ドロップ値であるので気にしない。
(通常は無負荷時720-750VDC これを切るとパワーは出なくなる)

再び元に戻して、ヒータON。煙が出ないか、暫く監視。
どうやら良さそうだ。

暖気運転が終わった所で、キャリアを半分にしてチューニングを取る。
故障前と変わらない出力が出ている。修理は成功だ。

R3 220Ω トランス中点タップ抵抗の温度測定をしても発熱は認められず
外観不良も無いので、今回の交換は見送った。(抵抗値の変動も無し)

何度もひっくり返して、最後に底板のビス留めを施し終了。
DDS外部VFOとアンテナを接続すると、各局のQSOが心地良く聞こえて来た・・・

このように、たかがダイオード交換修理でも後先を考えないと繰り返しの
修理が発生する可能性があるので奥が深いものだ。

今年になってから筆者のFT-101はいきなり機嫌が悪くなる事が多いが
全て自己対応可能な故障なので使い勝手は良い。

DSP搭載機種の無線機はこういった芸当は不可能だ。
まだまだ現役FT-101。

<ハム退治、電源修理 完>

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